第4章 人の資産を“見える化”する

人間力の定義

次頁の図は「人間力」の構成要素です。企業や地域社会で必要な能力は大きく3つに分かれます。

[図1]職場や地域社会で活躍する上で必要となる能力

基礎学力、社会人基礎力、専門知識です。読み、書き、算数、基本的なITスキルは小中高で学びます。専門知識は企業で実際の仕事に必要な知識や資格のことで、法律、税務、会計、金融、IT技術、生産技術、英会話などを指します。現在ではスキルと聞くとほとんどの人が資格に代表される専門知識をイメージするようです。

現在の社員教育はこの専門知識の習得を指すことが多いでしょう。新入社員教育、中間管理職教育、幹部教育などもテクニカルなものに終始する傾向があります。すなわち、人間の本質を見るのではなく、対症療法などを用いて改善しようとする傾向が見られます。つまり真因を特定せずに表面的な原因に対処することが多いということです。

複雑な時代を迎えたことで、企業においてもさまざまな部署で数々の難問を抱えるようになりました。部課単位で精神に支障をきたす人が多く見られることは、基礎学力、専門知識だけでは不十分であると考えられます。

結論から言えば、前頁の図の中央にある社会人基礎力が不足していることに原因があるとみてよさそうです。社会を見渡しますと、高度な専門知識を身につけた人が数多く存在します。専門知識はさらに細分化され、いわゆる“専門家”といわれる人であふれています。

しかし、その専門家の人たちと話をしていますと、どうも話がかみ合わないと感じることがあります。それは高い専門知識を身につけている一方で、コミュニケーション能力に乏しく、経営者の悩みを理解できない人が非常に多いからです。専門外のことになると、まるで小学生のような判断しかできない人が多いように感じます。

高度なIT技術を持ちながら遠隔操作で人を陥れたり、簡単に持ち出せないようセキュリティがかかっている1億件近い個人情報を横流しするなど、社会人基礎力が明らかに不足しているとしか思えません。

昔はこの社会人基礎力は家庭で身につけてきました。ものごとの善悪を判断する力は親からしっかり教わってきました。日本社会では誰もが「どんなことをしてもよいが、人様に迷惑がかかることだけは絶対するな」と親から叩き込まれてきたはずです。