人間力の定義

こうした危機感をもとに、2003年、内閣府に「人間力戦略研究会」が設けられました。人間力戦略研究会の報告書ではその構造的な問題として「我が国においては、経済・社会システムのみならず、その根本をなす国民の基盤的な力である人間力が近年低下しつつあるのではないか、との問題提起がなされている」⑯と述べられています。これは今や全国民の共通の認識ではないでしょうか。

報告書では「人間力」という言葉が使われています。この言葉は最近、いろいろなところで使われています。

人間力という言葉には曖昧な響きがありますが、報告書では「人間力に関する確立された定義は必ずしもないが、本報告では、『社会を構成し運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力』」⑰と定義されています。

その人間力をもう少し詳しく見ていきましょう。人間力戦略研究会によれば、人間力は大きく3つに分けられるといいます。知的能力的要素、社会・対人関係力的要素、自己制御的要素です。

知的能力的要素
「基礎学力(主に学校教育を通じて修得される基礎的な知的能力)」、「専門的な知識・ノウハウ」を持ち、自らそれを継続的に高めていく力。また、それらの上に応用力として構築される「論理的思考力」、「創造力」など⑱

社会・対人関係力的要素
「コミュニケーション・スキル」、「リーダーシップ」、「公共心」、「規範意識」や「他者を尊重し切磋琢磨しながらお互いを高めあう力」など⑲

自己制御的要素
上記の要素を十分に発揮するための「意欲」、「忍耐力」や「自分らしい生き方や成功を追求する力」など⑳

人間力戦略研究会ではこれらの3つの要素のバランスが崩れていると捉えています。それが企業、社会にさまざまな課題を投げかけています。

内閣府が考えるこの「人間力」に対して、人を企業の戦力として捉えた場合、必要とされる能力を3つに分けたのが経済産業省が発表した「職場や地域社会で活躍する上で必要となる能力」です。

本書では企業内で人を資産として育てるには何をすべきかについて解説していますので、内閣府の人間力を「基礎学力」「社会人基礎力」「専門知識」の3つの構成要素に分けて考えたいと思います。

※本記事は、2020年1月刊行の書籍『確実に利益を上げる会社は人を資産とみなす』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。