第1章 認知症とはどのような病気か?

認知症にもいろんなタイプがある認知症の代表的4疾患

認知症を起こすたくさんの病気(原因)が存在します。以前、認知症を痴呆と呼んでいた頃には、日本人にみられる痴呆は大部分が血管性痴呆で、アルツハイマー型痴呆は少ないと言われていました。

ところが、最近では欧米人と同じく日本人にもアルツハイマー型認知症が多くみられるようになり、日常診療においても避けて通れないコモン・ディジーズになっています。

認知症の研究が進むにつれ、認知症にも多くのタイプがあることが分かってきました。現在では多数の病気が認知症の症状を呈することが分かっています。

認知症の原因疾患別頻度は、アルツハイマー型認知症:約50%、血管性認知症:約20%、レビー小体型認知症:約10%、前頭側頭型認知症:約10%、その他:約10%であり、前4疾患を認知症の代表的4疾患と呼ぶことがあります。ただし、これら認知症の原因疾患を問わず、認知障害の原因は神経細胞自体と神経細胞間ネットワークの障害に起因します。

[図1]認知症の分類

認知症のタイプにより症状や経過が少し異なり、経過も治療も予後も介護の仕方も違ってきます。タイプを正しく診断しなければその後の方針決定をも誤ることになります。主な認知症タイプの特徴について以下に概説します。ただし、混合型認知症といわれる重複例もあります。例えば、アルツハイマー型認知症と血管性認知症の合併例などです。

[図2]大脳半球各葉(前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉)の働き