第一章 ユーモアな視点で楽しむ理科


シクラメンは旋回する花 平成十五年一月投稿

シクラメン(cyclamen)の和名はブタノマンジュウです。饅頭をつぶしたような円形の塊茎を持っていて、それをヨーロッパでは豚の餌にしていたようです。

牧野富太郎博士は、この花にふさわしくない名だとし、明治末期に新たにかがり火に見立ててカガリビ花と命名し、雅やかな名だと自画自賛していたようです。

ところで、このシクラメンという言葉はラテン語の「旋回する」という意味で、英語のサイクル(cycle)と同じ意味です。なぜ旋回するという意味の名が付いたかと言うと、従来その円形の塊茎によるとされていました。

しかし中村浩博士は、地中海沿岸に自生するシクラメンのつぼみが立つようになると、その花茎が螺旋形にねじれるのを見て、「これだ」と確信したようです。

余談ですが、病気見舞いにシクラメンを持っていったときに、シ・クラメンとは言わずサイ・クラメンと言うことがあるそうです。シという音おんが良くないので、シクラメンと言わずサイクラメンと偶然に言っていたのかもしれません。

しかし、これはcyclamenをサイクラメンと読み、シクラメンの語源のcycleからきているのかもしれません。患者に対する気遣いが、偶然にもシクラメンの語源にまで及んでいることは非常に興味深いことではないでしょうか。

大変だったホトケノザ探し 平成十五年三月四日掲載

先日の新聞のコラムに、春の七草のホトケノザが紛らわしいと出ていました。植物図鑑を調べてみると、シソ科のホトケノザの花は紫で、葉を仏様の座布団に見立ててこの名が付いたと書いてありました。

道ばたなどどこにでも生え、すぐ見つかるので多くの人はこれが春の七草と思って食べているようです。大手スーパーでも、これを七草の一つとして売っていることがあります。ほとんど一年中見られ、一月でも小さいサルビアのような花が咲き、子供が引っこ抜いて「チューチュー」と蜜を吸ったりします。

一方、キク科のホトケノザの花は黄色で、これが本家本元の春の七草のホトケノザです。ナズナにそっくりな葉が地面にへばりついていて、二月になっても花は咲かず、この葉だけで識別することは慣れた人でないと困難です。

生徒のお母さんが新聞の記事を見て、本物の「ホトケノザ」が知りたいと言ってきたので、早速近くの田んぼに行ってみました。道すがらそこら中に紫色の「シソ科」のホトケノザは満開状態でした。

ようやく田んぼに辿り着き、土手の土をなめるようにして探しました。しかし、なかなか見つからず諦めかけたとき、ふと見るとへばりついた葉が、まさしく「仏様の座布団」といった感じで本物のホトケノザが見つかりました。

本物の「キク科」のホトケノザ、みなさんも探してみてはいかがでしょうか。

* 紆余曲折を経て初掲載。いずれにしても、間違ってシソ科のホトケノザを春の七草と思って食べている人が全国に沢山いるのは確かです。でも間違って食べても安心です。どこにでも生えている、紫色のホトケノザは春の七草ではありません。本物を道端で見つけることはほとんど不可能です。

※本記事は、2018年7月刊行の書籍『日本で一番ユーモラスな理科の先生』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。