「ランフラットタイヤを装着した車はスペアタイヤがありません。またランフラットタイヤはパンクした状態でも走れますが、とはいえ何百キロも走り続けられる訳ではないのです。国際規格では『ランフラットタイヤはパンクした状態でも、時速八十キロメートルで距離八十キロメートルは走行できること』となっています。南アフリカのど真ん中でタイヤがパンクした時に、何百キロも行かないとサービスショップがないとなれば、ドライバーはなす術もないでしょう」

斉藤の答えに、バートはすぐに納得し、その上で、
「ショップ間距離を八十キロメートル以内とすることは、別の意味でも重要だと思います」
と、自分の意見を述べた。

「別の意味とは何だ? バート」
高倉が質問した。

「環境問題が世界で議論されてきているようです。CO2の削減という観点で将来は電気自動車が普及してくる可能性があります。南アフリカには世界的な自動車メーカー数社が工場を持っていますので、そうなった場合は、南アフリカでの普及は他のアフリカ諸国よりは早いと思います。電気自動車の場合はバッテリーの充電基地がポイントとなるでしょう。そのサービスを行う上でも、八十キロ以内にショップを持っているというのは意味があることだと思うのです」

このバートの意見に、

「なるほど! ショップを統廃合しつつ、八十キロメートル毎に持つというのはなかなか難しいかもしれない。だから今はそれを絶対条件とはしないが、それを見据えた上でのショップの統廃合を検討して欲しい」

と言いながら、高倉はさらに統合の方向性を説明した。

「現在の販売店当りの月平均売上高は五百万ランド(九千万円)だが、統合後にこれを三〇%アップとしたい。それから従業員の人員整理はやらない。このことは周知徹底しておきたい。統合によって吸収された店の従業員の中で、吸収した店に通いたいものは全員引き受ける。通えなくなって辞めていくものは仕方がない。これで人員の自然減を狙う。これが基本方針だ」

全員が「イエス・サー」と大きい声で言った。

「社長方針は理解したので、それをもとに我々で打ち合わせをして販売店統廃合の素案を作りますが、納期は?」
とバートが聞いた。

「三日以内に案を出してくれ。急がせて申し訳ないが、じっくりやっている時間はない。以上」

全員が一斉に「オーライ」と吠えるように言って立ち上がり、会議室を出て行った。

ヤング・ライオンズの後ろ姿を目で追いながら、
「頼むぞ」
と高倉は呟いた。

三日後にバートが持って来た販売店統合案は、現在の九十七店から、思い切って七十店に削減するものであった。

「よし、これでやろう。あとは走りながら修正もあり得るということだ。くれぐれも顧客に迷惑をかけるようなことだけは避けるように」
と、高倉が指示して当該プロジェクトは開始された。