第一章 発達障がいに悩む人たち

子どもの自尊心を守る

しかし、この怒鳴ることで、結果、お子さんの自尊心が低下してしまい症状を悪化させています。そして、自尊心が低下していくと、「俺なんかどうでもいいや、生きていてもしょうがない」と感じると、何もヤル気がなくなり、学力が徐々に低下することもありますし、反抗挑発症(ODD:Oppositional Defiant Disorder)や素行症(CD:Conduct Disorder)といった非行行為を誘引する二次的な障がいへとADHDが進展してしまう危険性があるのです。

ODDとは、自分にとってためになることでも反発して受け付けなかったり、周りに対して、挑戦的、挑発的態度を繰り返したりするというものです。

「かんしゃくを起こす」「大人と口論する」「大人の要求または規則に従うことに積極的に反抗または拒否する」「故意に他人を苛立(いらだ)たせる」「自分の失敗・不作法を他人のせいにする」「神経過敏またはイライラしやすい」「すぐに怒りを露(あら)わにする」「意地悪で執念深い」という8つの項目のうち4つ以上が存在するというのが一つの診断基準となります。治療によって比較的症状が緩和されやすいのですが、自尊心が回復できずに症状が進み、素行症まで発展してしまうと、なかなか緩和するのに苦労します。

学校の規則や社会のルールを無視する行動を何度も繰り返すというのがCDです。

「人や動物に対して脅迫・威嚇する」「取っ組み合いのケンカをする」「危害を与えるような武器(バット・包丁・銃など)を使用したことがある」「動物に対して残酷な行為をしたことがある」「強奪・ひったくり・強盗をしたことがある」「性行為を強いたことがある」「故意に放火したことがある」「他人の住居に侵入したことがある」「嘘をつく」「万引きしたことがある」「夜遅くの外出・外泊がある」以上のうち3つが存在するというのが、一つの診断基準です。

警察沙汰になってしまったり、中には親が家に警察を呼んだりするケースもあります。先日クリニックを受診した大学法学部志望の高校生は、恐喝および窃盗が2回めだったことから鑑別所に入れられてしまいました。外来では笑顔で話せるいい青年ですが、診察は腰ヒモと手錠をつけたまま鑑別所の職員と一緒になります。