「いいものをつくったら儲からないですよ」と衝撃的な言葉を経営者から多く聞くようになったのは、グローバリゼーションが本格化した2000年頃からです。日本の経営者から魂が消えていった瞬間でした。

物を所有するという強い本能からそろそろ離れなければなりません。所有するものは大切に扱いメンテナンスを行う。使い捨てではなくリサイクルする、あまり使わない製品はシェアする。

「アメリカでは、自動車は使用されていない時間が平均で92%にものぼり、きわめて効率の悪い固定資産になっている」。「一八~二四歳の若者に関する最近の調査で、回答者の46%が車の所有よりもインターネットへのアクセスを選ぶと答えた」。「うまく調整して車両をシェアすれば、個人所有の車よりも八割程度少ない台数で、同じレベルの移動性を提供でき、しかも投資額は少なくて済むだろう」といいます(出典:「限界費用ゼロ社会」ジェレミー・リフキン NHK出版)。

どうやら時代は、所有からシェア&リサイクルに年々、移っていきつつあるようです。モノに対する欲求を抑え、「足るを知る」社会をつくっていくことになるでしょう。

人間の欲望のコントロールの仕方は、現代に生きる私たちより、過去の時代に生きた人のほうがはるかにこころえていたようです。中でも、人間の精神に目覚めた枢軸時代(紀元前5世紀ごろ)といわれる時代に生きたギリシャの哲学者プラトンはこんなことを言っています。

「自足とは、もろもろの善いものの所有という点で完全であること。その状態にある人びとは、自分で自分自身を支配するような心の状態」。「虚栄とは、考えなしに、浪費する心の状態」。(出典:「プラトン全集15定義集」岩波書店)

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『ワークスタイル・ルネッサンスがはじまる』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。