第1章 認知症とはどのような病気か?

早期診断で認知症を見逃さない

認知症の診断で医療関係者は、認知障害の発症形式、期間、程度などに焦点を当てて、患者さんや周囲の人から情報を丁寧に収集しなければなりません。家族や周囲の人は、医療スタッフよりも前に認知障害の存在に気がついていることが多いからです。一般的に、次のような症状がみられる場合には認知症を疑われます。

◆同じことを何度もしたり訊いたり言ったりする
(聴力低下は認知症のリスクとなります。難聴は早めに専門医「補聴器相談医」を受診しましょう)
◆今日の朝食が何だったか思い出せない
◆失なくし物ものや忘れ物が多くなった
◆同じ物を何度も買う
◆家の鍵をかけ忘れて出掛けることがある
◆知らないところに行くと帰ってこられなくなる
◆いつも探しものをしている
◆薬を飲み忘れたり、たくさん余らせたりする
◆財布や通帳などを盗まれたと人を疑う

これらの症状は、加齢による単なるもの忘れかもしれませんが、頻繁にある場合は、認知症の初期症状の可能性があります。認知症による「もの忘れ」と加齢による「もの忘れ」は、明らかに違います。繰り返しますが、例えば、朝食を食べたことは覚えているが何を食べたのか思い出せないのが加齢による「もの忘れ」、朝食を食べたこと自体を忘れているのが認知症による「もの忘れ」です。