俳句・短歌 歌仙 2020.11.03 歌集「ひとり歌仙」より三首 ひとり歌仙 【第14回】 田中 靖三 “気がつけば超電導の虜なり” ――科学と日常を結びつける新しい文芸の形。 電気抵抗ゼロで世界に革新をもたらす夢の科学技術「超電導」。日々刻々と新しい技術に取って代わられる科学の世界において、人の寿命にも伍する100年以上の歴史を刻む「超電導」を、「5・7・5」の長句、「7・7」の短句を詠み重ねる歌仙方式で花鳥風月を織り交ぜ、詠いあげる。科学叡智の結晶「超電導」は、歌仙の響きと共にやさしく世界に溶けていく。 松尾芭蕉が作り上げたと言われるこの型式の、独吟による「ひとり歌仙」を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 鶏頭のいよいよ燃ゆる雨上がり 磁場を吐き出すマイスナー効果 キヤリアーの格子の波を渡るらん 海女に教へよあわび棲む礁 山桜枝を遥かに富士の峰 ふるさと揺るるたんぽぽ一花
エッセイ 『59才 失くした物と得た物』 【新連載】 有村 月 結婚してから35年、「愛」はなくとも「情」は生まれる ダンナが死んだ―まさかの現実。自覚はなかったが、この時から私の「おひとりさま」は始まろうとしていたようだ。たしかにダンナは肝臓の数値が悪いと1ヵ月半入院したものの退院、体力も少しずつ戻りはじめ還暦祝の1泊旅行もし、そのたった1週間後にはこの世からいなくなるなんて、頭の中のすみっこにさえなかった事。よくいう野球の九回裏2アウトからの逆転満塁ホームラン的な。その1年半前、最愛の母が「くも膜下出血」で…
小説 『ナーダ・サーガ 「無の国の物語」』 【第14回】 茂木 光春 何十個もの鉢植えの苗木には一本一本名前がついていて意味がわからず質問すると… ぼくは樽の中を覗いてみた。するとサンスクリット文字のごときもの、ハングル文字のごときもの、甲骨文字のごときもの、楔形(くさびがた)文字のごときもの、アラビヤ文字のごときものなどがうようよといて、泳ぎまくり、跳ね回っていたのである。そしてまた、楷書の魚もおり行書の魚もおり草書の魚もいた。さらに大文字の魚もいれば、小文字の魚もいれば、筆記体の魚もいれば、ブロック体の魚もいた。そして中にはそれらの合い…