タイヤにはいろいろなカテゴリーがある。

その中でトラック用ラジアルタイヤは重量物を長距離運搬することから耐久性が重視される。そのために、タイヤの外からは見えないが、内部にはスチールコードがびっしりと張りめぐらされてタイヤの骨格を形成している。

七洋商事がタイヤ取り扱いブランドの主力としているニホンタイヤのトラック用タイヤは、この骨格が強靭なことでユーザーから支持されている。

高倉はこの強みをもっと活用したいと考え、斉藤に相談した。

斉藤は、


「ご存知の通り、トレッドと呼ばれるタイヤの溝のある部分は、使われるにつれて徐々に摩耗していき、最後には溝がなくなってしまいます。そうしたらタイヤを取り替えなければなりません。それが一般的なユーザーの使い方です。ところがニホンタイヤの骨格はまだまだ生きていますので、このまま捨てるのは実にもったいない。リトレッドして再使用することが充分可能です。マキシマ社は各地に販売店とリトレッド工場を持っていますので、これをうまく活用して、ユーザー密着型のサービスを展開すべきと思います」

と提案した。

マキシマ社は当地にタイヤ販売網とリトレッド工場網を全国展開している。高倉が赴任する三年前の二〇〇一年に七洋商事がそれを買収した理由は、このネットワークが欲しかったからである。

問題はこのネットワークをどう活用するかだ。
高倉は斉藤の言うことはもっともだと思い、聞いた。

「ユーザー密着型のサービスというのはとても興味があります。もう少し具体的に説明してもらえますか」

「いくら強い骨格を持っているといっても、いいかげんな使い方をされたのでは、その強さを生かせません。新品を販売したら、そのタイヤを正しく使用し、しっかりケアすることが肝要です。それが顧客の近くにいる販売店の役割です。

特に空気圧管理と偏摩耗(タイヤが不均一に摩耗すること)防止のためのローテーション(装着位置の交換、変更)は重要です。これを顧客によく指導をする。場合によっては販売店のサービス員が定期的に顧客を訪問して行う。

それが高じてくると、顧客に常駐してサービスを請け負うケースも出てきます。こうなると顧客の囲い込みが出来るので理想的です。いずれにせよそうやればタイヤの溝はなくなっても、骨格は生きていますから、リトレッドして二次寿命、三次寿命まで使えます。このやり方は欧米では浸透していますが、その他の地域ではまだまだこれからという所です」

と、斉藤は黒縁眼鏡を左手中指で上げながら答えた。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『アパルトヘイトの残滓』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。