東京都立広尾病院事件東京高裁判決と医師法第21条

(4)医師法第21条は「外表異状」で決着

・「経過の異状」と東京地裁八王子支部判決

医師法第21条(異状死体等の届出義務)は、司法・行政ともに「外表異状」として決着していると考えられるが、未だに「経過の異状」に固執している人々がいる。

この「経過の異状」に固執している人々に引用されるのが、昭和44年3月27日の東京地裁八王子支部判決である。

八王子支部判決は、昭和44年の判決であり、この趣旨は、東京都立広尾病院事件東京地裁判決に受け継がれたと考えられるが、前述したように東京地裁判決は、東京高裁で破棄されており、「経過の異状」は否定されたと言うべきである。

しかしながら、未だに、八王子支部判決を「経過の異状」の根拠として持ち出す人々がいるので、同判決の概略を記しておきたい。詳細は第2章で記述することとする。

この判決の「法医学的異状」との文言が死亡診断書記入マニュアルに踏襲されたと思われる点からも検討しておくべき判決と思われる。

この事件の被告人は、病院を経営管理していた医師である。