自分の身を守るためにもきっちりとしたICを行わなければいけない。そもそも患者さんは自分の病気を治してもらいたいと思い、医者は患者さんの病気を治したいと思っている。

外科医は病気を治すための最善策が手術だと判断した時、手術を行う。当然不必要な手術はしない。

必要だと判断したからこそ、術前の検査を入念に行い、みんなで話し合って手術の方針を立て、たくさんの人手と長い時間を使って手術に臨む。

それだけの労力をかけたにもかかわらず、医者の思いが患者さんに十分に伝わらず、術後に対立することになるのはとても残念なことだ。確実なICをすることがお互いにとって幸せなのである。

話を戻すが、外科医は日中はほぼ手術に入っているため、早朝と夕方以降に病棟業務をこなす。朝は回診とカンファレンス、夜は回診と術前ICが主な業務である。

その他、書類仕事などの雑務や翌日のカンファレンスの準備を終えると、ようやく1日の業務が終わる。僕は仕事を終えるとできるだけ早く家に帰るようにしている。

家に帰るといっても僕たち若手外科医にとって勝負はそこからである。次の日の手術の予習、今日の手術の復習、糸結びや腹腔鏡手術の練習などなど、やるべき課題は山積みである。次の日も早いため、時間との勝負でもある。

(さて、何を食べようか)

※本記事は、2020年7月刊行の書籍『孤独な子ドクター』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。