第1章 認知症とはどのような病気か?

◎DSM-5での認知障害の診断基準

医師がよく使う症状をもとにした認知症の診断基準として代表的なものに、2013年に改訂(前回のDSM-4は1994年)された、アメリカ精神医学会によるDSM-5(精神疾患の分類と診断の手引:Diagnosticand Statistical Manual of Mental Disorders)があります。専門的な内容かもしれませんが、参考までに挙げておきます。DSM-5の大神経認知障害・小神経認知障害の診断基準は、以下のようになっています。

DSM-5の大神経認知障害の診断基準

A.1つまたはそれ以上の認知ドメイン(複雑性注意・実行機能・学習と記憶・言語・知覚‐運動・社会認知)で以前の活動レベルから見て明らかな認知障害を来している下記に基づく証拠がある。

1.個人、よく知られた情報者、もしくは臨床家の認知機能における明らかな低下があるという考え。
2.認知パフォーマンスが、標準化された神経心理学的試験において障害されている。それなしでも、別の定量化された臨床評価において相当に障害されている。

B.認知欠損が日常生活における自立性を障害している(最低限でも、料金の支払いや服薬管理といった日常生活の複雑な操作的活動において援助を必要としている)。

C.認知欠損はせん妄の経過でのみ現れるものではない。

D.認知欠損は他の精神障害(大うつ病性障害・統合失調症)ではより良く説明できない。