1 量的拡大から創造へ

私たちはグローバル資本主義で、世界のあらゆるところで生産活動を行ってきました。企業は今日より明日、今年より来年と飽くなき規模の拡大を続けてきました。しかも、価格競争力をつけるため、誰よりも安くモノをつくることに全力を傾けてきました。

流れを変えたのは、1990年代の中国での生産です。日米欧は大挙して中国に生産基地をつくり、モノづくりに向かいました。私は中国には1992年に入り、中国の発展を長く見てきました。経済特区の開発地域をたびたび視察に行きました。それこそ特区の境界が見えないほどの広大な土地を造成している場面を見て、「こんなことをしていたら地球は持たない」と暗い気持ちになった記憶があります。

しかも、中国は国家資本主義という都合のよい資本主義ですから、市場のニーズをしっかり調査せず、地方政府に生産量を割り当てていました。売れないものを膨大に生産し、死在庫がいたるところで山のように積み上げられていました。

このように象徴的に中国で見られた時代は完全に限界になっているのです。低コスト大量生産というモデルが限界に達したのです。ミクロ経済学の理屈だけで、大量生産を続けていれば、地球が壊れるのです。低コストモデルは大量廃棄とセットになっているのです。死在庫をどのように減らすのか、また資源のリサイクル技術を一段と磨く必要があります。

発展途上国は、大量生産、大量消費、大量廃棄を追体験する方向に流れやすいので、省資源技術や消費スタイルのあり方について、先進国のノウハウを移転することが重要です。

新型コロナ後は、どのようになるのでしょうか。資源を浪費するいままでの大量生産モデルではなく、資源の無駄と商品の廃棄をなくす生産活動を行わなければなりません。国連のSDGsゴールの12番、「つくる責任、つかう責任」を軸に生産活動を行うことです。

石から紙をつくることに成功した、株式会社TBNの山崎敦義氏や廃棄食品から安価で豚の健康に良い発酵飼料を開発した株式会社日本フードエコロジーセンターの高橋巧一氏はお手本となるすばらしい経営者です。

このお二方に共通するのは大量廃棄に心を傷め、この地球を救いたいという願いです。この動機が創造的な企業設立につながりました。まさにアフターコロナの企業活動だと思います。

既存の企業はSDGs12番を念頭に創造し、若い人には創造的な起業をしてもらいたいと思います。アフターコロナは、量から質に転換するのではなく、質を超えた創造が必要です。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『ワークスタイル・ルネッサンスがはじまる』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。