研修医の時代に内視鏡検査を指導した医師から私宛てに内視鏡専門医としての推薦依頼状が届きました。「私は貴君がどのような経験を積まれ現在どのように内視鏡に熟練されているか知りません。だから推薦はできない」と返事を書きました。

専門医偏重に対する反省から総合医の養成が叫ばれています。その反面市中の家庭医の先生方はみな総合的医療を行い地域医療に貢献されています。でもそうした先生方も開業前はそれぞれの専門を持った専門医でした。

そうした専門性のため家庭医になられても当然得手不得手があると思います。例えば循環器や呼吸器を専門とされた先生方は胃の内視鏡経験はあまりありません。

直接覗くのだから変化があればすぐに分かると思いがちですが、実は内視鏡検査には沢山の死角があります。注意をしないと見落としてしまう箇所が沢山あるのです。そうした死角を可能な限り無くし検査を行うのが専門医です。

逆に内視鏡医が心臓エコーの所見を理解できないこともあるでしょう。そのような自分の不得手を自覚しないと落とし穴に入ることになります。何よりも診療を受けられる患者さんが不幸なことになります。

Mさんの場合もCEAの上昇がなければ紹介されることもなく、診療が続けられていたと思います。

さて化石医師は若い頃の教えがしみ込んでおり疑い深い。過去のデータがあれば可能な限り遡り異常はないか、見落としはないかと再確認するようにしています。

そのように振り返ると自身の見落としも含め、新しい発見もあります。日常診療においてはいつも疑うことが大切なように思います。

※本記事は、2020年6月刊行の書籍『新・健康夜咄』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。