現実が三次元だとすれば、夢は四次元なのかもしれない……。そんな夢のまどろみの中で、私は過去を反芻していた。そこに何か未来を開くカギがあるのだろうか……。

過去を今に持ち込むのは残酷だ。私は未来の設計図に着手したいのに……だが、焦ってはいけない。信じよう。とにかく今は信じるしかない。

目を開き、腕時計を見ると七時半過ぎだった。ベランダから、朝の光が燦々とふりそそいでいた。

私はプーさんから手を離し、ブランケットをたたんだ。散らかっている品々を一つ一つ、スーツケースに入れ、最後にブランケットにプーさんを優しく包むようにして入れた。

洗面所へ行き鏡を見た。手ぐしで少し髪をとき、泣いた目元をティッシュでふいたが、化粧直しはしなかった。部屋へ戻り、バッグを肩にかけ、届いた四〇センチ四方ほどの平たい包みを脇に抱え、スーツケースを引っぱり、玄関へ行った。

振り返り、二十一年間、世話になった部屋を見わたし、私は思わず手を合わせた。ドアをあけ、外へ出た。元町の駅まで歩き、JR神戸線に乗って三ノ宮へ着き、地下鉄に乗り換え、新神戸に着いた。

自立したくて来た神戸で、私はどれだけ自立できただろうか? 結局のところ、又、一から出直すために、神戸を発つのだ。二十一年間を空しいと思う心が、私を前へと進ませる。

新幹線のホームへ行くと、九時前で、私はのぞみを待った。列車が滑り込んで来て、ドアが開き、私は七号車に乗った。進行方向左手の窓辺の席だった。

天気がいいから富士山が見えるかもしれない。私はやっと少しウキッとした。スーツケースをまさぐり、ペットボトルのお茶を出し、少し飲んだ。

十二時には東京に着く。東京では福田が待ってくれているはずだ。私は福田を信頼している。