しかし、こうなる可能性があることを知っておきながら、この薬を処方し続ける医者がいますからね。それもかなりの数の医者が。

中村:ところで、私は女優という職業上、比較的ストレスがたまりやすいのですが、芸能人の中にはうつ病にかかっている人もかなりいます。やはり現代病の一つなんでしょうか?

溝口:世の中全体を取り囲む環境があまりにも変わりすぎたことが一番の原因だと思います。こういった精神的な疾患をすべて社会や会社の責任にしてしまう風潮がありますが、果たして本当にそれだけなんでしょうか?

その人の性格、生活形態、友達関係、両親との関係、育ち、食生活など、いろんなものが組み合わさって発症するものだと考えています。けっして、社会や会社だけの責任だとは思いません。

セクハラやパワハラ、モラハラなどを否定するつもりはありませんが、世の中どんなに転がっても競争社会です。多くの支えが必要だとはいえ、自分一人で対峙し、自らの力で切り拓いていかなければならない場面がたくさんあります。そこで必要なのは順応性、適応力です。

ここでちょっと面白いお話をしましょう。ゴールデンライオンタマリン(以下、ゴールデンタマリン)という動物は知っていますか?

中村:いいえ。

溝口:これは絶滅危惧種であるサル科の動物です。このゴールデンタマリンをある実験に使った話です。その実験とはゴールデンタマリンの野生復帰計画の試みです。

1984年に行われたのですが、最初に放たれたのは14頭。そのうち1年以内で11頭が死亡しました。なぜ、11頭ものゴールデンタマリンが1年以内で死亡したと思いますか?

※本記事は、2019年4月刊行の書籍『ゴッドハンドが語るスポーツと医療』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。