算数障害

発達障害でもASDのある子どもは、数字にたいへん興味を示す場合があります。記憶力がよいのと、数には曖昧さがなく、ルールがきちんとしていて、答えが明確にでるのが好きになる理由かもしれません。

しかし、繰り上がりや繰り下がりの段階になると、たちまち計算が難しくなる子どもがいます。児童センターでかかわった落ち着きのない子で、たとえば、「23−5=0」「34−17=0」のように、筆算で1の位で引かれる数が引く数より大きいと、すべて答えを0にする子がいました。

知的な遅れはないのですが、その子によると0になった時点で、もう計算は終わりという理屈なのだそうです。面倒くさいという心理もあるのかもしれません。

文部科学省の平成15(2003)年「特別支援教育の在り方について」の全国調査により障害の定義と判断基準(試案)が示されました。算数障害の子どもにみられる状態については、次のような例を示しています。

〈計算する〉

①学年相応の数の意味や表し方についての理解が難しい
(三千四十七を300047、347と書く)
②簡単な計算が暗算でできない。計算するのにとても時間がかかる
③答えを得るのにいくつかの手続きを要する問題を解くのが難しい(四則混合の計算、2つの立式を必要とする計算)
④学年相応の文章問題を解くのが難しい

〈推論する〉

①学年相応の量を比較することや、量を表す単位を理解するのが難しい
(長さや量の比較、15センチは150ミリということ)
②学年相応の図形を描くのが難しい(丸や菱形の図形の模写、見取図や展開図)
③物事の因果関係を理解するのが難しい
④目的に沿って行動を計画し、必要に応じて修正するのが難しい
⑤早合点や飛躍した考えをする

学校は同年齢で集団での一斉指導を基本としており、SLDについては個性の範囲や努力不足とされることが多かったように思います。

しかし、子ども自身はできないとは思われたくない気持ちが強いのです。特に小学校高学年から中学生にかけては、自我が形成される時期で、他人との違いを意識し、自尊心(プライド)が高くなる反面、劣等感ももちやすいのです。わざと勉強しないふりをし、「だから俺は成績が悪くてもしょうがない」というセルフハンディキャッピングをもつ子もいます。

それは、自分の失敗の原因を外的条件に求め、自己評価を下げる行動です。それを防ぐためにも、自我がさほど強くない小学校低学年から丁寧な学習指導が必要です。プライドの極端な低下やセルフハンディキャッピングは、非行に走りやすくすると思われます。

※本記事は、2019年6月刊行の書籍『もしかして発達障害? 「気になる子ども」との向き合い方』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。