第1章 本書の重要事項

重要事項14 人類という生命体の性質

(10)性は善である。

性善説と性悪説のどちらが正しいか、という論争があります。

論争の必要はありません。人間の性は善であるに決まっています。

人間の性が善でなく悪であり、一人一人が善を無視しあるいは忘れ悪の限りをつくすということであるならば、人類はもうとっくの昔に自滅により絶滅しているに違いありません。

そうしますと、絶滅することなくこうして存続していて、人間の性は善か悪かなどということをのどかに考えていられること自体が人間の性が善であり悪ではないことの紛れもない1つの証明になります。

つまり、人間の行為は善から悪へ傾くことがあっても、悪を克服する善の力が働き、善に復元するということです。悪から善へ傾くことがあっても、善を克服する悪の力が働き、悪に復元するのではありません。復元先は善であり悪ではありません。

辞書には、性善説と性悪説について、下記のように、解説されています。

性善説─人間の本性は善であり仁・義を先天的に具有すると考え、それに基づく道徳による政治を主張した孟子の説。荀子の性悪説に対する。

性悪説─荀子の性説。人間は欲望を持つためその本性は悪であるとして、礼法による秩序維持を重んじた。孟子の性善説に対立。