胃検診の本命である早期がんの診断件数も年々減少しています。変わって以前にはあまり診断されなかった過形成性ポリープという良性の変化が多く見つかります。以前にはあまり気がつかなかった変化です。撮影技術の向上なのか、読影力の向上なのか、それとも受診される方々側の変化なのか気になるところです。

病院での検診ではもう一つ変化があります。上部消化管造影ではなく最初から内視鏡検査を希望される方が増えているのです。消化管造影を受けても異常をチェックされ内視鏡検査に回される。それなら初めから内視鏡検査を受けた方がいいと思われるのでしょう。

口からの内視鏡に比べ苦痛の少ない経鼻内視鏡の普及も内視鏡検査希望者増加の一因でしょう。

ところで上部消化管造影の数を多く診なければ診断能力はなかなか向上しません。また自ら撮影しないと描出された変化がどのように生じたかも理解しにくいものです。消化器科医師が自ら上部消化管造影を行わなくなった結果読影力が低下していると思うのは化石医師の危惧でしょうか。

でも細かな変化を苦労して読むより内視鏡をやった方が早く正しい診断に結びつく。色調の変化もわかる。そんな意見もあります。もっともな話であり時代の変化です。

さて周知のように食生活の変化に伴い、日本人の胃がんの罹患件数は年々減少しています。変わって大腸がん患者数は増加の一方です。大腸がん検診の普及と下部消化管内視鏡の進歩と手技の向上も影響しています。

胃検診は日本人の胃がん発見に大きな役割を果たしてきました。検診によりがんを発見された方も多い。しかし胃がんが減少し、検診での発見率も低下し医師の読影力が低下し、別な診断方法が普及した現在継続の可否を検討する時期に来ているのかもしれません。

※本記事は、2020年6月刊行の書籍『新・健康夜咄』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。