第1章 医療

胃検診に思う

消化器を専攻したため化石医師は若年の頃から胃検診写真の読影に携わってきました。当時は上部消化管造影写真による早期胃がん診断の全盛時代でした。全国から多くの若手医師が東京の研究会に集まり、読影技術の向上に努めたものでした。

また細かな病変を描出するため造影剤の種類、濃度、圧迫するための座布団の厚さ一枚にも拘り病変を鮮明に描出する技術を競い合いました。病院でも必ず読影会が開催され、撮影された上部消化管造影写真を複数の目でチェックし、見落としを防ぐと共に読影力の研鑽に努めたものです。

そのような複数の目によるチェックとは異なり胃検診写真の読影は個人によるチェックですから責任は重大です。

本来は自覚症状のない早期の胃がんを発見するための胃検診ですが田舎という特殊性もあったのでしょうか、当時は「どうしてこんなに」とびっくりするような進行胃がんが発見されたり、大きな胃潰瘍、十二指腸潰瘍がごろごろと見つかったものです。

勿論本命の早期胃がんも一定の割合でチェックされていました。時を経て最近は消化器科医師の仕事は内視鏡検査が主力となり専門医であっても各病院で自ら上部消化管造影を行う医師が少なくなっています。代わって撮影者の主体は放射線技師に移って来ました。

さて検診ですが以前認められたような進行胃がんがチェックされることはほとんどなくなりました。現在活動している胃潰瘍、十二指腸潰瘍も発見されることはまずありません。十二指腸潰瘍の瘢痕である十二指腸球部変形も減少しています。