「リスクマネジメントマニュアル作成指針」は、趣旨部分で、「国立病院等における医療事故の発生防止対策及び医療事故発生時の対応方法について、国立病院等がマニュアルを作成する際の指針を示す」としているが、マニュアルの作成及び報告部分で、「各施設は、作成したマニュアル及びマニュアル作成の際の検討メンバーについて、……本省に報告する」と記述し、暗黙の強制を行っている。

問題点は、警察への届出部分である。注記で、「医師法第21条の規定により、医師は、死体又は妊娠4月以上の死産児を検案して異状があると認めた場合、24時間以内に所轄警察署に届け出ることが義務づけられている」としたうえで、「医療過誤によって死亡又は傷害が発生した場合又はその疑いがある場合には、施設長は、速やかに所轄警察署に届出を行う。」と記載している。

異状死体と医療過誤とを混同した誤った記載が、警察への過剰届け出の元凶となったことは明らかである。本通知が、東京都立広尾病院事件の係争中に出されたことも大きな問題点であろう。

本指針は、「国立病院等における」と明示されてあったにも係わらず、「国立病院をはじめとする全医療機関」と解釈され津々浦々に伝搬されていった。

当時の医療事故に関する講演会では、「法医学会異状死ガイドライン」、「死亡診断書記入マニュアル」、「リスクマネジメントマニュアル作成指針」が警察届出の根拠として講義されていた。

※本記事は、2018年12月刊行の書籍『未来の医師を救う医療事故調査制度とは何か』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。