第Ⅰ部 医療経営戦略

第2章 医療におけるマーケティング戦略

市場地位に基づく戦略の定石(図1)

[図1]市場地位に基づく戦略の定石

フィリップ・コトラーは、「競争地位別の戦略類型は市場地位によってとるべき戦略の定石が異なる」という考え方を示しました。まず、リーダーとは業界の市場シェアがトップの企業で、量的にも質的にも優位な資源を保有している企業です。

日本の自動車業界におけるトヨタです。トヨタのテレビCMを見ていると、だいたいが「家族みんなで車に乗ってお出かけするのが日本人の最高の幸せ」といった価値感を刷り込む内容になっています。シェア1位の企業は、国内で自動車全体の売り上げが伸びれば自社も自動的に儲かるからです。

C型肝炎の経口治療薬でシェアトップのギリアド・サイエンシズ社は、「C型肝炎は全員治癒できる」といったテレビCMを流しています。実際にギリアド・サイエンシズ社の薬剤で95~98%の人が12週の治療で完全に肝炎ウイルスを排除できます。

リーダーは2位以下の企業の価値を貶めるように同質化する戦略(同質化戦略)を取ることもあります。京都ではトップシェアである京都大学医学部附属病院が、京都府立医科大学附属病院がこれまで得意としてきたはずの顧客目線、開業医目線で病診連携を活性化させる方向に舵をとっているのもリーダーの同質化戦略です。

一方、松下電器(現、パナソニック)が、「マネシタ」電器と揶揄されるのは、ソニーが開発した新製品を大量に生産して、ロープライスで売り出す戦略からです(セカンドムーバー戦略)。松下電器は品川にソニー研究所があるといわれたほどです。

また全方位戦略と言って、トヨタですと小型車から大型高級車までのフルラインアップにし、あらゆる顧客を取り込みます。

チャレンジャーとは、市場シェア2番手の企業群に属し、リーダー企業との差別化によりリーダー企業に挑戦している企業です。自動車業界では日産やホンダに該当します。日産はフェアレディZやスカイラインのように、特徴のある車種を売り出してきました(差別化戦略)。

ニッチャーとは、市場シェア上位のリーダーやチャレンジャーとは棲み分けており、特定領域において規模は小さくても、独自の地位を築くことに成功している企業を指します。軽自動車や小型自動車で独自の地位を築いているスズキをイメージすると分かりやすいです。

フォロワーとは、質的にも量的にも競争優位を発揮できるような経営資源を保有しないため、上位企業を模倣し、できるだけ効率化を行い、将来に向けて経営資源を蓄積するものです。

皆様の属する医療機関の医療圏における市場地位はいかがでしょうか?

病院情報局(http://hospia.jp/)で医療圏におけるシェアを確認して頂くことができます。シェアに応じた戦略の定石を踏まえて経営戦略を立案してはどうでしょうか。

※本記事は、2017年12月刊行の書籍『MBA的医療経営』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。