2012年(平成24年)10月26日、田原克志厚労省医政局医事課長発言、2014年(平成26年)3月8日、大坪寛子厚労省医政局総務課医療安全推進室長発言、さらに、同年6月10日参議院厚労委員会での田村憲久厚労大臣発言を引き出すこととなる。「医療の内」と「医療の外」を切り分けて解決を図ったことの大きな成果である。

医師法第21条の異状死体の認識は、「外表異状」として確立に向かうのである。医療事故調査制度理解のためにも、また、医師法第21条の解決のためにも、「医療の内」と「医療の外」の二つの概念を切り分けて理解することが必要である。

その後、2015年(平成27年)、厚労省は平成27年度版死亡診断書記入マニュアルを大幅に改訂、法医学会異状死ガイドライン参照の文字を削除、「異状死」と「異状死体」を区別した記載へと変更した。医師法第21条は、東京都立広尾病院事件裁判により、「検案とは死体の外表を検査すること」として、司法的には答えが出されたが、医療界に「外表異状」はなかなか定着して来なかった。

医療事故調査制度をめぐる論議過程で、「医療の内」と「医療の外」を切り分ける考え方が定着するとともに、徐々に、医師法第21条は「外表異状」との考えが拡がってきたのである。

田原克志医事課長発言、大坪寛子医療安全推進室長発言、田村憲久厚労大臣発言を引き出すとともに、死亡診断書記入マニュアルの改訂にたどり着いたことから、医師法第21条の「外表異状」は、行政的にも確立した。

これらの変化を明確に読み取れるのが、[図1]の警察への届け出件数の推移である。

[図1]警察届出件数の推移
※本記事は、2018年12月刊行の書籍『未来の医師を救う医療事故調査制度とは何か』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。