溝口:日本の患者はどこかで神様・仏様・お医者様と思っている節がありますね。でも、そんなことは全然ないです。それこそ悪代官みたいな医者もいれば、お金のことばかりしか考えていない医者もいますし、雑な人も丁寧な人もいます。

昨今、新しい治療法や新薬が出て選択肢が増え、日進月歩に医療が高度化・細分化してきています。それ自体はいいことかもしれませんが、あまりにも情報が氾濫しすぎて現場の医者自身もついていけないという側面もあります。そして、日々の患者に対応するのに手いっぱいという現実もあります。

しかし、だからといって、患者を事務的・機械的に処理していいということにはなりません。国家試験に合格して医師免許を取得するということは、おそば屋さんの暖簾分けの一つ、出来事にしか過ぎません。丁寧にそばを打つ人もいれば、雑に打つ人もいます。当然ながらその打ち方次第で味にも大きな差が生じます。

常にお客様のことを考えていれば魂の入れ方や技術の使い方も全然違ってきます。医者も同じです。ですから、患者はもっともっと医者に質問すべきです。疑問に思ったことやわからないことはどんどん聞くことです。

インフォームドコンセントにより、患者は医者から提示された治療の選択ができる権利を持っているのですから、何ら遠慮する必要はありません。薬の処方を例にとって話すと、なぜこの薬を使ったのか? なぜこの薬の効果が出たのか? なぜこの薬は効かなかったのか? なぜこの薬を飲んだら副作用が出たのか? など、常に「なぜ?」と問うことが重要です。

特に専門用語については聞き取りにくい、理解しにくいというケースが多いと思いますので、聞きとれなかったら「もう一度お願いします」、わからないときは「もっと詳しく説明してもらえますか?」と聞き直すことも必要です。それでもわからなかった場合は、セカンドオピニオンを活用してください。

そして、必ずメモを取る習慣をつけてください。記録を残すということは医療過誤、薬の副作用、予後不良などが起きた際に非常に役立ちます。そして、いい加減な説明や処方、治療をしないように、医者への抑止力にもなりますし、何よりも自分自身の病気やケガについておおよそ理解できるようになってきます。メモは医者の前でもどんどん取るべきです。

中村:はい、これからメモを取るようにします。

※本記事は、2019年4月刊行の書籍『ゴッドハンドが語るスポーツと医療』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。