[図1]の表にあるように現在の貸借対照表に人を資産として位置づけます。そこには固定資産の部に教育投資を行い、潜在力を高めた知的資産をBS-1、「人の資産(非減価償却資産)」として計上します。

時間とともに劣化しない知的資産の金額です。企業の未来力を高めたり、イノベーションをはかろうとしたとき企業にとって最も大切な資産となります。

ものごとには光と影があるように、人の資産にもポジティブとネガティブの両面があることを忘れてはいけません。BS-2に「人の資産(育成機会損失引当金)」を新たに計上します。

企業が外部の派遣社員や契約社員の力に頼りすぎていれば、一時的な採算性の向上や経営の安定化という視点では役に立つかもしれませんが、企業の未来をつくるには大きな問題を抱えてしまいます。

そこで派遣社員や契約社員への依存体質からの脱却を目指し、このマイナス金額を少しでも取り戻さなければなりません。

次に、企業が低迷してから、この20年、盛んに論じられてきたビジネス・スキルについての項目をBS-3「人の資産(減価償却資産)」に計上します。これはビジネス・スキル資産を計上するのではなく、減価した金額を計上することになります。したがって、人資産のマイナス勘定として計上されます。

専門知識が求められる時代になったのですが、その一方で社会の変化が激しいために獲得した専門知識では追いつかず問題解決の役に立たなくなってしまうという実情も存在します。このことをしっかり認識し、減価償却額として計上します。

また、戦力となっていない新入社員は、BS-4「人の流動負債(新入社員)」として計上し、メンタルケアが必要な社員がいれば、BS-5「人の流動負債(メンタルケア社員・短期)」、BS-6「人の固定負債(メンタルケア社員・長期)」と計上します。

メンタルケアを必要としている社員を放置すれば、全社一丸となって収益アップを目指すときの支障となってしまいます。ストレスフルな社会であるからこそ、企業は社員が健全な精神状態を保つことに常に注意を払う必要があるのです。

では、具体的に人のバランスシートに表示するBS-1からBS-6までの項目の計算方法について触れておきます。

※本記事は、2020年1月刊行の書籍『確実に利益を上げる会社は人を資産とみなす』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。