第1章 医療

コモンセンスと医者模様

検査担当者が浮かぬ顔をしています。

「どうしたの?」

「外傷で来られた方の写真を撮ったのだけれど骨折があると思います。でもどうも担当医はそのまま帰宅させてしまったようなので心配で」「それだったらそのように上申すればよかったのに。その方が医師も助かるでしょう」「出来ませんよ。そんなことしたら医師でもないのに余計なことを言うな。馬鹿、たわけと罵られる。だから誰も余計なことは言いません」。

馬鹿なのは一体どちらか。どうも古風な感覚の医者殿達はこのような傾向があるようです。

「俺が医者だ。俺が一番だ。下々の者は黙っておれ」と看護師さん、薬剤師さんなど関係のスタッフが「検査をされていませんがそろそろオーダーされてはいかがでしょうか」「このお薬よりこちらの方が……」「そんなことわかっておる」の一喝。

年を取った化石医師などはスタッフからの助言に抵抗はありません。「おおそうだね。気が付かなかった。ありがとう」です。一人の力が及ばないことでも何人もの目で見れば落ちることも少なくなります。

ある日突然の手紙が届きました。

「ペースメーカーの点検に来られたけれど以前より悪くなっている。だから以後は当院で診ます」。

患者さんの自覚症状はなく経過観察の検査でも変わりはありません。当院から診察依頼の紹介をした訳でもありません。化石医師ならば「少し状態が悪くなっているようです。可能でしたら当方で診療を担当させて頂きたいと思いますがいかがでしょうか」くらいな表現をします。でも一方的な通告でした。