しかし、社会に出たばかりの自分の未来は前途洋々で最も可能性を秘め、複雑で高度なことが世の中を動かす原動力となるという考えが間違っていることにいずれ気づくときがやってきます。

「つまらない」壁を数多く経験していくうちに、優秀だと思っていた自分は消え、自らが「新人のときに凡庸だと思っていた先輩」のようになっていくのです。

世の中はやはり一筋縄ではいかないのです。

企業は「大学や大学院を出たばかりの若い社員は完成前の仕掛品である」と受け止めなければなりません。完成品になるまでは、数多くの試練を乗り越えなければならないのです。昔と比べ変転めまぐるしい時代です。思考方法、知識、行動などに多くの時間を投入しなければ使いものにはならないのです。

したがって、新入社員の資産力は「開発研究期間」を経なければ決算書に計上できないと考えるべきでしょう。業種、分野によって異なりますので、企業によって開発期間を定めればよいと思いますが、約3年と考えるのが現実的ではないでしょうか。

つまり企業の時間単価は、入社3年以内の新人社員の数を差し引いた人数から算出するのがよいでしょう。算式が次にあります。

人件費総額÷(社員総数−入社3年以内の社員数)÷年間総労働時間平均=現在の時間単価

これまで人を資産として育てるためには、決算書に可視化できる形式を備え、継続的な検証を行えるようにすることが大事だと考えてきました。資産としての人を量的に計測できるような形式を整えてこそ、人材を育てることができるのです。そうすることで人を資産として大事に育てる文化が企業に根づいていくことになります。

第二の決算書として人を資産として位置づけ、科目処理できるようにしたものを次頁に掲載しておきます。これを参考にしていただき各企業の実態に合わせて書式を整えていけばよいでしょう。

※本記事は、2020年1月刊行の書籍『確実に利益を上げる会社は人を資産とみなす』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。