第1章 認知症とはどのような病気か?

◎認知症の周辺症状(行動・心理症状)とは?

中核症状が認知症の中心の症状であるのに対して、「周辺症状」は「行動・心理症状(BPSD)」と呼ばれ、認知症でみられる行動症状・心理(精神)症状ですが、誰にも必ず現れる症状ではありません。

ある人には一部の症状が強く出る一方で、他の症状は全く出ないこともあります。6割から9割の患者さんに経過中にみられるとされ、どの症状が主体となるかは患者さんによる個別性が高いといわれます。

周辺症状の発現に関連する要因として身体状態、疼痛や不快感、薬の副作用、心理社会的要因、環境的要因などが挙げられますので、必要に応じてこれらの改善を図ることも大切です。

また、周辺症状は、その人の中核症状の状態、遺伝、本人の性格、身体状況、生活環境、介護者との関係性など、実に多くの要因が複雑に絡み合って現れると考えられています。

周辺症状のうち行動症状としては、徘徊、暴力・暴言、嗜好の変化、食行動の異常(異食)、失禁・不潔行為、日内リズムの変動、無反応などがあり、介護に対する抵抗を強く示すこともあります。

心理症状としては、抑うつ、自発性低下、不安・焦り・不穏、幻覚、不眠(睡眠障害)、妄想などがあります。
その具体例は次のようなものです。