ブルーストッキング・ガールズ

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第一印象でお転婆に見えた美津は、小柄で、矢絣(やがすり)えび茶の着物や袴がいちばん似合っていた。きちんと丸髷(まるまげ)に結ったうなじは白く、大人びていた。

四人は、和菓子屋できんつばを買ってお堀で食べたり、浅間神社の石段を登って、鬼ごっこをして走り回ったり、遠い富士山を眺めながら「中学校の誰それはうちの学校の誰それに恋文を送って停学になった」「学校の某先生の奥さんは三人目だ」「安倍川の心中事件はやはり姦通だった」など、大人たちの秘密に踏み込んで、ひそひそ声で話したり、思わず声をあげて笑ったりしていた。

喜久と美津は、お互いが文学好きだと分かると、二人きりになったとき、今はやりの小説や詩や短歌の話をしたりした。美津は『明星』や『青鞜』を読ませてくれたりした。厳しい家庭の喜久は、そんな雑誌があると知ってはいたが、喜久の家ではそれはあくまで「悪書」であり、美津が見せてくれる本は未知の世界だった。

美津の家は呉服町にある大店の「淺野」だった。喜久は裏木戸から入り、広い庭にある離れの部屋の前に立った。多佳や晴はもう来ているらしかった。

晴の大声は外まで聞こえる。お約束の、門屋のきんつばで、会を始めているようだ。

「こんにちは……美津さんおかげんはどう。晴ちゃんも、多佳ちゃんも来てたんだ」

美津の床はガラス戸に沿って敷かれ、庭が見渡せる。美津は床から体を起こし、赤い花柄の丹前を羽織っている。彼女は短く切った髪、小さな顔とクリクリとした大きな目で喜久を迎えた。

美津の部屋は少女たちにとって、心安らげる場所だった。呉服屋のこの離れは、先々代の主人が茶会や句会を開くために建てたもので、十五畳ほどあり、割合と広い。南はガラスで、庭が秋の日射しを浴びている。部屋の隅に大きな火鉢があり、鉄瓶に湯が沸いて、白く湯気が出ていた。