やっぱりこのまま身体を許すのは嫌だ。貞操観念に目覚めたあの日から、自分が好きではない相手とはセックスができないのは分かっていたが、相手も自分に好意を持ってくれていないとセックスができないのだと悟った。

しかし、ショウ君の気持ちを確かめる勇気はなかった。

もし身体だけが目的だとしたら面倒だと思われてこの関係は終わる。曖昧な関係をはっきりさせてしまうことで、彼が私から離れていくのは怖かった。

それでも『愛のないセックス』はしたくないのだから、私の気持ちを聞いて彼がもし離れていっても仕方ないと諦めるほかなかった。

まだ想いがまとまっておらずどう伝えていいか分からないと言うと、ショウ君はゆっくり伝えていいよ、と言ってくれた。私は心に抱えた不安をポツリポツリと声に出してみた。

このままセックスしてしまっていいのか。まだ私はショウ君のこと何も知らないのに。

確かにショウ君は優しくしてくれる。でもそれは身体目的の優しさではないのか。私はお互いに気持ちがないとセックスができない。今はまだショウ君の気持ちが分からない。文章にならない想いを私は吐き出した。

すると、ショウ君は私の言葉を聞いて幻滅するどころか、なんと感激してくれた。

「正直に気持ち話してくれて嬉しい。みゆちゃんも普通の女の子だったんだって安心したよ」

ショウ君はむしろ、自分が性欲を満たすための道具としか思われてないと思い、私にあまり踏み込めなかったと言った。確かに私はショウ君への好意をひた隠しにして、ただ身体だけを求めるような言動をとってしまっていた。

彼は私に猥談ばかりをしたが、それは私が望んでいると思っていたからだった。本当はショウ君も、私ともっと色んな話がしたかったのだ。

私は彼の前で初めて本心をさらけ出し、それを受け入れてもらえた喜びで今にも泣き出しそうになった。よかった、と心の声が思わず口をついて出る。

「好きだ、美雪ちゃん」

電話の向こうでショウ君が言った。時が止まったように思えた。

これからはもっと普通の会話を楽しもう。そんな約束をして、電話を切った。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『不倫の何がいけないの?』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。