2)B社(精密部品製造会社)の事例
―外注先への恩義と遠慮が関係を受身にしていた―

B社では鋼材とメッキが主な外注品でしたが、創業以来外注工場の好意的とも言える支援を受けて順調に成長してきたとの認識や、環境問題からメッキ工場の転注先がないとの思い込みから、外注先との関係がかなり受身になっていました。

その状況を打破しようと改善が鹿児島工場から始まりました。メッキ工場に対して、月1回の出張指導を軸とする品質の集団指導が始まりました。又メッキ工場も、担当者をB社に派遣してB社の受け入れ検査に立ち合わせる等して協力を惜しみませんでした。そうした相互の協力によって課題だった「品質」がみるみる改善されていきました。

“案ずるより生むが易し”。一旦話がまとまると、厳しい競争を発注者と受注者が協力して乗り切ろうという共存共栄の姿が実現したのです。

3)C社(印刷会社)の事例
―「発注ルール」がないまま外注が過大に、原因は社内の不協和音―

C社では、原価の改善点を探る中で、注文をとってくる営業部門と印刷や工程管理などの現業部門との協力関係が上手く行かず、社内で印刷可能なものまで外注に回していたことがわかりました。

本来、自社で印刷加工できないものを外注する方針だったのですが、いつの間にか社内の協力体制が悪いために社内で出来るものまで外注するという、思いもよらぬルール不在の状態になっていました。

社内関係部門の協力体制の重要性、部門間の信頼関係の重要性を物語るもので、一旦それが失われるとどれほど深刻な事態をもたらすかを示しています。

4)D社(部品製造会社)の事例
―納期遅れの原因は自社に―

D社では、D社自身の納入先に対する「慢性的納期遅れ」が問題でした。その結果関係部門の深夜に及ぶ残業は常態化していました。そうした中で外注先にも「納期」を守って頂こうと、社長が呼びかけられて外注工場の社長を集めての会議が開催されました。

ところが会議の様子を社長にお聞きすると、外注工場からの発言は、意に反して発注者であるD社に対する要望が殆んどで大変恥をかいたとのことでした。

外注先との関係では、通常発注側と受注側双方に原因があるものですが、このように自社(発注側)にも多くの原因があることを理解すべきです。

教訓

1、何のために外注するのか、外注の目的を明確にする
2、外注先との関係は“共存共栄”の精神で
3、原因の半分は自社にある

※本記事は、2020年6月刊行の書籍『生産性向上はこうする』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。