二月十四日。朝からデパートに出かけた。お目当ては有名パティシエ監修の高級チョコレート。五個入りで一箱三千円だった。大好きな人に渡すバレンタインチョコレート、お金なんて毛ほども惜しくなかった。

夕方ショウ君から連絡が入り、都心の有料パーキングで待ち合わせることになった。祖母に買ってもらったお気に入りのハイブランドのワンピースに身を包んで車に乗った。クラシックコンサートにはこのドレスと決めていた。しかしなかなか髪型が決まらず、十分ほど遅れて到着した。

ショウ君はもう自分の車を駐車させ外で待っており、私の車で会場へと向かうことになった。ドレスアップした私の姿を見るなり彼はうっとりとした。私は照れながらショウ君を乗せいざ会場へと車を走らせた。

都心から離れ、夜も更け、どんどん辺りは暗くなってゆく。友人出演の舞台は住宅街にポツンとある、小さなコンサートホールだった。

車を停め駐車場を歩く。暖かい夜だった。真ん丸の月が怪しく辺りを照らす。春の気配を感じさせる風が柔らかくうなじを撫でた。

会場に着くともう演奏が始まっており、私たちは身体を低くして席を探した。
小さな会場でどの席に座るかをショウ君に任せると、彼は思いのほか前のほうの席を選んだ。

正直、私は友人の演奏などどうでもよかった。ただクラシックコンサートという優雅で気品のある場所で、愛する人とロマンチックな時間を過ごすことができればそれでよかった。

しかしいざ席に着くと難点に気がついた。椅子の肘掛けが邪魔で手を繋げないのだ。

ショウ君と密着していたい私は仕方なく肘掛けの上から無理やり手を伸ばして彼の太ももを撫でた。前半が終わり展示物を見て休憩を過ごしたのち、ホールに戻った。今度は周りに誰もいない席を選んだ。そこは先ほどよりもずっと舞台に近い場所だ。

友人の演奏に耳を傾けるふりをしながら、私はまたぎこちなくショウ君の太ももを撫でた。すると彼は突然スラックスのチャックを開けた。私はドキドキしながら彼の社会の窓から手を入れた。同時にもう一方の手を自分のドレスの裾の中へ入れて動かし自慰の仕草をして見せた。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『不倫の何がいけないの?』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。