ガチャーーーンッ

けたたましい音がした。

運転手が半分だけ閉めた車の窓に、ガラス瓶が当たって砕け散った。

ボーンッ

爆発音がして、一瞬にして車の運転席が炎に包まれた。
火炎瓶が車に投げつけられたのだ。

「おおーーーーっ」ただ集まっているだけの「静かな群集」から、大きなどよめきと歓声があがる。歓声は下から突き上げるような地響きとなって、車に乗る劉温来の体を揺らした。

火炎瓶の爆発が引き金となり、それまで静かだった群集から怒号が発せられた。
怒号は繰り返し、繰り返し発せられ始めた。

火炎瓶の炎は、とてつもない高温の熱風となって、後部座席に座っていた劉温来を襲った。
よける間もなく、熱風が劉温来の顔を殴りつけるように襲いかかり、髪の毛が燃える嫌な臭いが鼻を突いた。

爆音は耳に高音の「キーン」という音を響かせ、劉温来は耳がよく聞こえない。炎で炙られた顔の痛みに耐えながら、爆発と同時に反射的に閉じた目を開けた。

「ぎゃあああーーーーっ」
運転手が頭を炎に包まれ、断末魔の叫びをあげている。

「キーーン」という音に遮られ、劉温来には運転手の叫び声が遠くで虫が鳴いているように聞こえる。運転手が激しく頭を振るので、炎は油と一緒に車内に飛び散り、劉温来が座っている後部座席にも炎をまき散らしている。

前の座席はすでに火の海で、激しい火柱がフロントガラスを突き破っている。

「ぎゃあああーーーっ」
炎に包まれた運転手が苦しみ悶えながら頭を振り、炎を巻き散らす。
シートが燃え、黒い煙が車内に充満し、劉温来は煙を吸って激しく咳込んだ。
運転手の叫び声が止まった。

炎に包まれたまま、真っ黒に焼けた頭をがっくりとハンドルに落とし、後頭部を燃やしながら動かなくなった。肉と髪の毛が燃える異様な臭いが劉温来の鼻を刺す。

ヒューーーッ
再び風を切る音がして、別の火炎瓶が車に飛んで来た。

ガチャーーンッ
車のボディに当たった火炎瓶が割れ、ボーンッという爆発音が続く。

熱風が劉温来の皮膚を炙る。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『コール・サック ―石炭の袋―』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。