体長一〇センチほどの体に、ソノ部分は七ミリほど。もしイモリが一メートルもあれば、ソノ部分は七センチにもなるから、きっと猥褻物陳列罪(わいせつぶつちんれつざい)に値する。今少し丁寧(ていねい)に構造を説明すればいいのだが、あまり詳しく記述すると卑猥(ひわい)になる。純文学を標榜(ひょうぼう)する吾輩にはなかなかできんのである。

イモリについて書くのはほかでもない、今回は「イモリの黒焼き」について考察したい。

「イモリの黒焼き」は古来から、「女に付ける惚(ほ)れ薬」と言われてきた。
ものの本には、この薬の作り方から、使用方法まで書いてある。

今はネットで検索すれば、イモリの蒸し焼き、生薬として漢方薬局が作り方を解説し、通信販売もいたしておる。

雌雄のイモリを(交尾している雌雄をそのまま)黒焼き(蒸し焼き)にし、これを粉末にする。この粉末を目指す女に振りかけるか、飲ませるのである。すればたちまち女は振りかけた男を恋慕うと書いてある。

江戸小話に
ある男、美しい娘に惚れたが、一向にこちらになびく気配もない。考えあぐね、娘が婆やと出掛けた時、イモリの黒焼きを振りかけたところ、急に風が吹き、婆やの方にかかってしまった。しまったと思った時にはもう遅い、イモリ効果はてきめん。入れ歯の婆やが着物の裾(すそ)も振り乱し、いきなりしがみついてきた。男は慌てて逃げ出す。婆やは追いかけて来る、行き止まりの川土手、ままよと川へ飛び込んだ。婆やも川へ、川水がイモリの粉を洗い流し、正気に戻る。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『お色気釣随筆 色は匂えど釣りぬるを』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。