第一章 発達障がいに悩む人たち

学校に行けなくて困っている子どもたち

学生時代の出来事として、発達障がいと密接に関わってくるのが不登校です。かつては登校拒否とも呼ばれていました。発達障がいの症状が原因で学校に馴染(なじ)めず、不登校に陥ってしまうケースは少なくありません。

文部科学省が2013年8月に発表した前年度の「学校基本調査」によると、全国の小・中学生の不登校児童生徒数は11万2437人にも上るのです。これは30日以上休んだ長期の不登校であって、これに30日未満の短期の不登校や不登校予備軍である登校しぶりのお子さんを含めると、かなりの数になるのではないでしょうか。

不登校とは、なんらかの心理的・情緒的・身体的あるいは社会的要因・背景により、お子さんが登校しない、あるいはしたくともできない状況にあること(ただし病気や経済的理由によるものを除く)をいいます。不登校は本人にとっては、楽な状況なのかもしれませんが、将来のことなどを考えると周りの人間にとっては心配でなりません。

私のクリニックにも不登校に悩んでいる親子がよく相談に来ます。主な不登校の原因としては、自律神経失調症でうつ病も併存した自閉スペクトラム症と、身体的な要因からくる自律神経失調症の一種である起立性調節障がい(OD)による不登校の2つです。

まずは、典型的な自律神経失調症でうつ病も併存した自閉スペクトラム症について例を挙げて説明していきます。Dさんが初めて私の外来を受診したのは中学2年生の春でした。Dさんは非常に痩(や)せていて、白いマスクをしてうつむいたまま静かに診察室に入ってきました。