喜久は親しい友人たちに呼びかけ、美津を見舞おうと約束したのだ。みんなそれぞれが美津に会いたくて、日曜日のたびに誘い合わせて集まっていた。

喜久たちが美津に出会ったのは、入学式の日だった。明るい多佳(たけ)がまず初めに、喜久に「ねえ、あなたどっから来たの」と話しかけてきた。

「安倍街道の牛妻からよ」

多佳は、「私は久能。石田多佳。よろしく」

そのとき、「わー」と叫ぶ声がした。

そのそばで、がま口を噴水の池に落としてしまった、と晴(はる)がおろおろと青ざめていた。

「門屋のきんつばが買えるかなって、確かめてたのよ……ああどうしよう」

噴水といってもアオミドロで濁っている。彼女を慰め、枯れ枝で池をつついて一緒に探した。

校庭の噴水の前でそんな三人を見ていた美津が、袴をはしょって腕まくりをすると、池水に濡れるのもかまわず底を探るようにして、ついに拾い上げ「あったよー、これでしょ」と叫んだ。

晴はがま口を受け取ると、とたんに泣いてしまった。がま口を落とした娘(こ)は、焼津から来た鈴木晴だと名乗った。そしてびしょ濡れになってしまった娘は、この近くの呉服屋「淺野」の長女美津だと名乗った。

「へー、あの大きなお店の、淺野屋さん」。

三人は顔を見合わせて驚いた。小さな「がま口事件」をきっかけに、四人は友達になった。