第一章 変わりゆく妻の異変に気付く

六、アルツハイマー認知症と診断された…認知症と闘う決意をする

その翌週、妻は、MRIを撮った。脳を輪切りにして断面で調べるX線CTもあるが、MRI検査では、人体の磁気共鳴作用を利用して、縦、横、斜めといろいろな角度から、脳の中を立体的に調べることができる。

MRIは、磁気なのでX線被爆もなく安全だ。ただ、大きな機械のドームの中に入り音がするので、妻は、不安感を持って怖がっていた。検査は、数十分かかって無事終わった。

1週間後、再び診療所を訪れた。また、私が先に呼ばれた。ピンときた。先生は、MRIの写真を見ながら、

「奥さんの、MRIの結果をお伝えします。これが、奥さんの脳の写真です。この鳥が飛んでいるような白い部分が、海馬です。この本の図が正常な方の海馬、これと比べると、奥さんの海馬は、小さくなっていますね。神経細胞が壊されて縮小しています。残念ですが、アルツハイマー型認知症に罹っておられます」

とおっしゃった。

そうではないか、と思っていたが、やはり、直接聞くとショックだった。頭が良くて、あんなにしっかりしていた妻が、なぜ、認知症なんかになるんだと、内心憤慨するとともに、可哀想で仕方がなかった。私は、本人を憎まず病気を憎んだ。

「先生、本人に言うとショックを受けると思いますが、言われるのでしょうか?」
と聞いた。

「ご主人のお気持ちは、良く分かります。でも、隠しておいても、必ず分かる時期がきます。これまで、騙されてた、嘘をつかれてきたとなると、ご主人との信頼関係が崩れます。この際、はっきり、お伝えしておいた方が良いと思います」
と言われたので本人を呼んだ。

先生は、素敵な笑顔で、

「検査の結果が出ましたよ。これが、あなたの脳です。正常な方の脳と比べますと、小さくなっていますね。脳の病気が見つかりました。軽いアルツハイマー型の認知症に罹っておられます。心配することはありません。年を取ると、遅かれ早かれ罹る病気です。お薬をちゃんと飲んで、楽しく毎日を過ごせばいいのです。何にも恐いことはありません。大丈夫ですよ」

と優しく接して安心を与えてくれた。