「本当かい?」林は驚いた。「それはすごい発見だ! ぼくらのいる世界があながち縄文時代じゃないかもしれないってことだ。だって、駅があるなら、ここは現代かもしれないよ!」

「ひ、人はいるか?」砂川は勢い込んで尋ねた。

「いや……、人は見えない」盛江はオペラグラスをおろした。「みんな、とにかく行ってみようぜ」

八人は足取りを早め、川の水際までやってきた。川は幅広だが浅く、流れは緩やかだった。みなズボンのすそを膝までまくり、手をつないで数珠つなぎになって岸を渡った。駅はもう目の前である。

「おい見ろ」砂川が叫んだ。

彼の指先は二〇メートルほど先の地面を指していた。そこには奇妙な断層――舗装道路の断面があった。笹見平のキャベツ畑への道が切れているのとは逆で、道が途中からいきなり始まっている。向こうの建物の方へと続いている。

砂川は切断部分に駆け寄り、しゃがんで道の周辺の土や草を見比べた。

「何か分かる?」林は尋ねた。

砂川は顔を上げ「なんとなくだけど――断面を境に、駅側とこちらとでは違う。きっと袋倉駅周辺も、笹見平と同じように現代から縄文時代にタイムスリップしているんだよ」

「笹見平からここまで歩いてきたけど、途中で現代らしい痕跡は何一つ見なかった。タイムスリップってそんな風に点々と行われるの?」

「それは分からん」砂川は首を捻った。
林と砂川はしばらく顔を見合わせていた。

ふと、
「おい、みんな」盛江が手を叩いて注目を集めた。「ちょうど腹も減ったし、駅でお昼にしようぜ」

「賛成」声が上がった。

「呑気な奴だな」砂川は半笑いで盛江を見た。
林はにんまりし
「まあ、ちょうど頃合いだし、いいんじゃない?」

八人は袋倉駅のプラットフォームに横一列に腰掛けた。
留守番部隊が持たせてくれたおにぎり弁当を広げた。

※本記事は、2020年7月刊行の書籍『異世界縄文タイムトラベル』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。