WALKMANを開発するなど高い技術力を有していながらiTunes時代の到来を見抜けなかった名門SONYが揺らぎ、また世界を席巻した任天堂がスマートフォンのゲームに遅れをとってしまうなど、時代をリードしてきた企業が市場の変化に喘(あえ)いでいます。

現代社会における企業はひとつの評判であっという間にのし上がり、同様に一瞬で潮が引くこともあり得ます。とくにモノを持たないゲームを中心としたネット企業の浮沈は激しさを増すばかりです。ネット企業は特殊な例だとしても、モノであふれる社会に生きる人々は、物質的なものから感動を得ることが少なくなっているのではないでしょうか。

関心がモノから“ココロ”に移っていますが、それもまた激しい変化に曝されているのです。

企業経営者はもはや社会の変化に適応するだけでは十分ではなく、深い洞察力を持ち、変化をつくる企業にならなければ生き残れないといわれる時代です。デジタル革命、グローバリゼーション化というふたつの大きな潮流の中、私たちの生き方は大きく揺らいでいます。

このような変化の激しい時代を迎え、会社の寿命は30年といわれた時代から、今や5年とささやかれるまでになりました。

私たちは努力しなければ劣化します。もし自分自身を資産として捉えるならば、そこにも耐用年数があると考えてはどうでしょうか。変化のスピードは業界、職種によってさまざまですので、一概に耐用年数を定めることはできませんが、企業の実情においておおよそ目安がつくのではないでしょうか。

製品のプロダクトサイクルが5年であれば、5年後にはまったく新しい製品をつくり出さなければなりません。その場合、製品の耐用年数は5年と考えることもできると思います。

同様に人の耐用年数を5年と考えてみましょう。5年前、つまり「一昔前」の自分ではいけないのです。自分を絶えず磨き上げる努力を続けなければ、時代の変化についていくのは難しいでしょう。そうした意味では資産としての人の耐用年数を5年と考えた場合、毎年、減価償却分の20%は新しい知識力を身につける必要があるのです。

人を資産として捉えた場合、昔の土地資産のようにたとえ時代が変わろうとその価値が変わらない部分もあります。それは社会人基礎力、つまり専門知識を生かすための知的インフラです。こうした資産は時間が経過しても衰えることはありません。それは非減価償却資産です。

これに対して、専門知識を中心としたビジネス・スキルは耐用年数のある減価償却資産と考えたほうがよいのです。ビジネス・スキルを身につけているからといって安穏としていてはいけません。時代の変化に伴いブラッシュ・アップさせる必要があるのです。

資格を身につければ一生安泰だと思っている人は考え直してはいかがでしょうか。

※本記事は、2020年1月刊行の書籍『確実に利益を上げる会社は人を資産とみなす』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。