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翌朝起きると、時刻は十一時を多少過ぎていた。そういえば昨晩のこと、心地とチャイナ・タウンで夕飯を食べた後、メイフェアのブラウンズ・ホテルに場所を移し、バー《セント・ジョーンズ》でスコッチを飲んだことは良く覚えている。

しかしその後がいけなかった。もう一軒と連れていかれたのが、今やスノッブな連中に大人気のノッティング・ヒルという場所だった。確かE・E・Eとかいうバーに連れていかれたところまでは良く覚えているが……。

昨晩は久しぶりにかなりの深酒をしてしまったらしい。朝食時間は既に過ぎていたが、一階のコーヒー・ハウスでコーヒーにマフィンを食べると、体調もやっとノーマルな状態に戻ってきた。

フロントに顔を出すと東京から一通のファクスが届いていた。律子からだった。

[前略 スケジュール表では今日ポルトガルに移動する予定のようですが、順調に旅行を続けていらっしゃると思います。私の方は変わらずです。東京は梅雨空なのに、連日三十度を越える夏日です。

さて先日、磯原先生がお見えになりましたよ。俊介さん、先生にはポルトガルへの旅行、おっしゃってなかったの? 先生、アトリエに立ち寄られたようよ。

私が俊介さんの居場所を知っているのではないかと《昴》に立ち寄られたの。用件は次のようなことです。