結局この日、セックスはしなかった。一通り感じ合ったあと、取り立てて美味しくもない普通のルームサービスを食べてホテルを出た。車の中で、次に会う約束をした。私は普通のデートがしたいとショウ君に言った。

「しようよ。普通のデート。みゆちゃんがしたいことをしようよ」

ちょうど次の週に、私の友人が出演する小規模のピアノコンサートがあった。私は思い切ってショウ君をそれに誘うとあっさりと承諾してくれた。その日はバレンタインデーだった。

次の日私はバドミントンサークル『ジョイナス』の練習に参加した。片道二時間かけて地元の体育館へと向かう間、車で大好きなラブソングを聴きながら悦に浸った。練習中も昨日のことを思い出すと自然と口元が緩む。

そんな私の様子を見て、何かいいことでもあったのかと田代君が話しかけてくれた。

田代君は私がサークルに入って最初に仲良くなった三つ歳上の男友達で、兄貴肌な彼を私は慕っていた。

旦那や姑の愚痴を聞いてもらうことも度々あり、私の内情を彼はとても良く知っていた。それでも私の不倫話は彼も予想だにしなかったようで驚いていた。

私はそんな田代君の反応をよそにめいっぱい惚気話をした。頭の中はこんなにもショウ君で埋め尽くされているのに、その溢れんばかりの想いを本人にぶつけることもできず、まさかハギに言うわけにもいかず、ひっそりと胸にしまっておくしかなかった。

それをやっと吐き出せた私は話せるという快感に打ちひしがれていた。想いは口に出すと余計に強くなったように感じた。私がうっとりとした表情であまりにも幸せいっぱいに話すので、田代君も微笑んでくれた。

その恋が不倫ということも、田代君は指摘しなかった。私自身も自分がまさか不倫をしているんだという自覚はほとんどなかった。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『不倫の何がいけないの?』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。