ところで我ら釣り師たちは、どこかに人の知らない良い釣り場はないかと常に探している。大物の潜んでいる秘密の釣り場、誰も知らない新しい釣り場はないかと始終探している。秘密情報があるといって集まり、ヒソヒソと密談したりもする。

東の者は西の釣り場に好奇(こうき)の目を向け、西の者は東の釣り場に挑戦する。たまたま釣果が上がると、俄然(がぜん)ファイトが湧いてしばらくはその釣り場所に没頭(ぼっとう)する。

実は、このような人間の新奇好(しんきず)き現象を、「クーリッジ効果」と呼ぶそうである。

クーリッジとは、アメリカ第三十代大統領のカルビン・クーリッジのことで、彼が国立農事試験場を視察した時の逸話(いつわ)からこの言葉が生まれた。

農場の養鶏所に先に着いた大統領夫人に、説明員が、
「オンドリは一日に数十回交尾する」と言うと、夫人は何とも羨(うらや)ましいという表情で、
「すごいわね、それ後で、主人が回って来た時も、話してちょうだい」と上気して頼んだ。

大統領が来た時、説明員は夫人のリクエスト通りにしたところ、クーリッジは
「君、オンドリは同じメンドリばかり相手にするのかね」
「いいえ、相手は全部違います」。それを聞いたクーリッジは
「そのことを、いつか女房に教えといてくれ給え」と憮然(ぶぜん)として言ったのだ。

昔から、「女房と畳」の話があるが、動物の世界でも同じである。

ハーバード大学の教授だった板坂元先生の本に、ネズミと猿の話が載っている。ネズミのオスとメスを一匹ずつ飼育箱に入れると、ソレッとばかりに交尾が始まる。

初めは回数が非常に多いが、時期が過ぎると、回数が目立って少なくなる。それは彼らの性的能力が低下したのではない。もし、メスが新しいのと入れ替わると、交尾の回数がまた直ぐに多くなり、彼らの性欲は著しく高まる。

ネズミのこうした現象を「コロンバス効果」と言うそうである。

これは猿の場合も同じで、日本猿を使った実験では、初対面からしばらくの間は猛烈(もうれつ)な交尾が行われるが、やがて低下する。盛んな時期と、落ち着いた時期の比率は何と一五対一だった。

女房たちは盛んな時を正常と思い、我らは落ち着いた時を正常と思っておる。したがって、両者の間には常に一五対一の認識の相違があるのである。

半月ぶりの釣行にもさながら毎日でも釣りに行ってるが如く「またー」とは何たる言いぐさ、全くもってケシカラン。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『お色気釣随筆 色は匂えど釣りぬるを』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。