では、どのようにすれば身につくのでしょうか。それは同じことを何度も学んではじめて身につくといえます。古代ローマの哲学者、キケロは次のように言っています。

習慣は人間の第二の天性である。(※注)

身についた習慣は、やがて生まれつきの性質のようになるということを意味しています。継続は力なりです。例えば、社内教育の一環で「今日、困ったこと、悩んだことをひとつ挙げなさい」と指示したとします。

誰かがその日に起きた嫌な出来事を発表し、それについて参加者全員で徹底的に分析します。対立はなぜ起こったのか、相手はどんな理屈をぶつけてきたのか、自分はどう考えたのか、相違点は何かなどについて徹底的に討論をします。

そこで上司や経営者が意見を述べ、具体的な方策を提示するという話し合いを粘り強く続けるという方法があります。結果だけを報告させるのではなく、結果に至るプロセスについて深く話し合うことで、人は大きく成長していくものです。

仕事についても同様のことがいえるでしょう。この話し合いを毎週、繰り返し行えば確実に成果が上がります。私の経験から、意見交換が活発になるのは開始後1時間半あたりです。

また1回あたりの時間は2時間に留めておくのが最も効果的でしょう。1回当たり2時間の教育を行えば、年間の教育延べ時間は月1回で24時間、2回で48時間、週に1回で96時間となります。

月1回では、習慣とするには頻度が足りないでしょう。日課にできれば理想ですが、企業の実情により月2回、週1回などの頻度が現実的だと思われます。

大事なことは習慣とすることです。知識を理解させるだけでは人を資産として育て上げることはできません。習慣によって知識を記憶させ、行動につなげなければ未来を生み出すことはできないのです。

※本記事は、2020年1月刊行の書籍『確実に利益を上げる会社は人を資産とみなす』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。