第一章 注射にしますか、お薬にしますか?

日本原で戦車隊に囲まれる

ところで話はガラリと変わる。

実はオイラが就職して二年目の二四歳の頃だった。自衛隊の皆様にひどく迷惑をかけ、叱られたことがある。

一年間一緒に仕事(大阪の金融機関)をした同僚の女子社員が二二歳で退社した。当時(昭和四二年頃)の女子社員は二二、三歳で退職し、結婚をするため出身地へ帰ったのだ。

彼女は岡山県北の出身で、
「五月の連休に遊びに来ないか」と手紙が来た。

「津山城跡(じょうせき)を見たい」などと調子のいい返事をしたところ、
「三連休に来て、自分の家へ泊ってくれ」と話が具体的になった。

丁度その時、オイラの得意先が連休中に岡山県津山の工業団地へ資材を届け、一泊して完成品を持ち帰る便があると言う。渡りに船だ、ピックアップの小型トラックに便乗して津山へ行ったところ、完成品の納入が早まり、とんぼ返りの日程に変更になった。

積み込み前の一時間余りをもらって、津山から三〇分足らずの最寄り駅へ一人トラックを運転して出かけた。

直ぐ家へ行こうとする彼女に「直ぐ帰る」
驚く彼女と押し問答。

父母は旅行で、三日間留守をするという。そこへオイラを泊めるつもりだったのだ。
途切れ途切れの彼女の話は、そういうことだった。

一緒に仕事をしている頃、青い制服におかっぱ頭の目立たない女が、髪を後ろに結ぶと、白いうなじの生え際が驚くほどに艶めかしい。