第2章 障害のある子どもの理解

子どもの「困り感」が障害

保育園等の乳幼児教育機関で「気になる」または「配慮を要する」、「グレーゾーン」と呼ばれる子どもたちが増えてきています。

そのような子どもたちは発達障害なのか、違うのか、よくわからないまま、保育園等の先生方が対応に困っている様子がみられます。幼児期の段階では本人の困り感より、親や保育者などの周りの困り感が大きいような気がします。

教育学者の佐藤暁(さとる)氏は、「保育園・幼稚園や学校では、子どもの『障害』そのものを扱うのでなく、『障害』によって引き起こされる子どもの『困り感』に対応した支援が行われなくてはならない」(『発達障害のある子の困り感に寄り添う支援』学研、2004年)といいます。

困り感は個人のもつ資質と置かれている環境によって違ってきます。困り感は子ども本人より、保育者や親などの周囲が感じている場合があります。その困り感は子どもにどのようにかかわったらよいのかがよくわからないため、保育者自身の子どもへのかかわり方がこれでよいのかという不安からくるような気がします。

私が園の先生方から相談を受けた時には、ちょっとしたヒントやかかわり方を教示したり、助言・コメントしたり、肯定的に背中をちょっと押すようにして、取り組んでいる方法を認めているだけで、「な~んだ、それでよかったんだ!」と先生方の自信につながっていくような気がします。

行動経済学に「ナッジ」という言葉があることを知りました。

「肘を押す」という意味だそうです。教育現場の困り感に、ちょっとした工夫で助言をするだけで、先生と子どもとの関係がよくなることがあります。保育者側の「困り感」の表れとして、どうにか早く子どもの状態をよくしたいという先生たちの焦りが先立っている姿がみられることがあります。