第一章 ほうりでわたる

ラジオ放送

終戦直後から「ラジオ歌謡」の放送が始まりました。敗戦から立ち上がろうと、国民を元気付けるために、明るく未来を目指していくような感じの歌が多かったような気がします。

《森の水車》は、戦後の混乱から抜け出して明るい未来がやってくるようなウキウキするメロディーです。《リンゴの唄》は並木路子が明るく楽しく歌います。どれも当時の人々に夢や希望を与えるような歌でした。

《雪の降る街を》は、私の中ではショパンの幻想曲と重なりますが、冬にこの曲を聴くと、本当に深々と降る雪の情景が浮かびます。初めは暗く感じますが、突然明るい日差しが差し込んできて、気持ちまで明るくなるような感覚を覚えます。

他にも美空ひばりの《リンゴ追分》など、多くの曲が放送されました。

一九五二(昭和二十七)年から始まったラジオドラマ『君の名は』は、放送時間になると女湯がガラ空きになると言われた人気番組でした。当時はみんなラジオドラマに感情移入していたんですね(最近ヒットしているという映画『君の名は。』はまだ観ていません……)。

私が好きなラジオ番組は、冒険活劇シリーズ『新諸国物語』の『笛吹童子』『紅孔雀』でした。福田蘭童作曲の「ヒャラリヒャラリコヒャリコヒャラレロ……♪」というメロディーがたまらなく好きでした。古本屋で『紅孔雀』上下二巻を見つけた時は、ビビッと感じて即座に買ってしまいました。

テレビが街頭に現れる前の時代の話です。