砂川は二人の意見を全て聞き、

「沼田は『今会わないで済んでいる』と言うが、それはたまたまに過ぎないぜ。現に近辺でハート形土偶が出た。彼らはすぐそばまで来ている。もし彼らの方からこっちに関心を持ってきたらどうする? 交流を求められたら? 攻め込まれたら? いずれにせよ、関わりは避けられない」
「関心を持ってきたら、の話だろ」
「こういうのは何事も先んじるのがいい。以後のイニシアチブを取れるってもんだ」
「なんにせよ、ぼくは反対だ」

沼田は断言した。

「反対ばかりでは物事が前に進まないよ」

砂川も退かない。

「まあまあ」

林が間に入った。

「まだ縄文人がいると決まったわけじゃない。だけど、縄文人がいた場合を考えて、仲良くする準備はしておくべきだと思う。早坂君の言う『歴史不干渉』も分かるよ。だけど、殴って歴史が変わることもあれば、殴られて歴史が変わることもあるでしょ? だったら殴られたくはないよね?」
「まあ、そうだが……」

早坂は渋い顔をした。打ち合わせの空気は淀んだままだったが、こうして、探検の目的に「今井東平遺跡に行ってみる」という項目が加わった。

ルートは、現在水源にしている川に沿って下り、吾妻川の本流に出て、長野街道――国道一四四号線――を東へ。谷あいから北上して今井東平遺跡に近づく。長くて三日、急いでも日帰りは無理だろう。

探検隊のメンバーも決定した。

隊長:盛江直生
副隊長:砂川雄太郎
隊員(大学生):林優斗、岸谷学
隊員(中学生):池上司ほか男子一名、女子二名

※本記事は、2020年7月刊行の書籍『異世界縄文タイムトラベル』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。