Chapter4 探検隊

塀の工事は中盤に差し掛かった。もう暑い日はない。日中は過ごしやすく、夜は冷え込む。一番の課題だった木杭立てが終わった。

そこでメンバーは一旦中止していた東南方面への探検を再開することにした。新しい水源や耕作に適した土地が欲しかったし、冬が来る前にもう少し周囲の状況を知っておきたかった。こういった方針は以前と変わりは無かったが、今回は砂川が新たな意見を述べたことで、探検の意味合いが変わった。

「確か笹見平の近くに今井東平遺跡ってのがある。もし今が縄文時代なら、そこに縄文人が住んでいるかもしれないな」

大学生らはその遺跡のことを知っていた。吾妻川沿いにある無人駅・袋倉駅から北へ少々行ったところに、谷あいの集落がある。そこがその遺跡だ。大学生らは春のサークルイベントで一度そこを訪れたことがあった。

「おいきみ、縄文人にわざわざ会いに行くっていうの?」

沼田は、反対とまでは言わずとも、暗に否定的な気色を漂わせた。

「考えてみたまえ。我々は洋服を着ている。これは現代の格好だ。縄文人から見たらまるで宇宙人だよ。警戒されて、きっと危険な目に遭う。今会わないで済んでいるんだから、それにこしたことはないよ」
「その通り」

早坂が口をはさんだ。

「しかも、もう一つ懸念があるぞ。前にも言った通り、俺たちがこの時代の人間に干渉すると、歴史が変わってしまう可能性がある。そういうことは避けるべきだ」