本人には自覚症状がなく、10年から20年も前から徐々に進行し、今日に至っています。あとで、奥さんの診察の際、認知症の評価テストを行います。その結果によっては、脳のMRIを撮ってもらうかもしれません。その場合、後日連れてきてあげてください」と親切に説明してくれた。

「よく分かりました。よろしくお願い致します」とお礼を言って診察室を出て妻と交代した。先生は、にこにこしながら「こんにちは」と挨拶され、妻は「よろしくお願いします」と少し固くなっていた。私が、側にいると気が散ると思い、「お父さんは、外で待ってるから」と言って診察室を出た。

20分くらいして、「お父さん、終わったわ」と診察室から出てきた。普段と変わらなかった。

「次に、ご主人、お入りください」と言われ、再び診察室に入った。先生から、「認知症の知的機能検査、長谷川式認知症スケールテスト(*注)と呼ばれる検査をさせてもらいました。その結果、やはり、認知症の疑いがあります。なので、来週月曜日に宇治の本院までMRIを撮りに行ってください」と告げられた。

「はい。分かりました。連れて行きます」
「それから、アリセプトという薬3mgを1カ月分、出しておきます。認知症状を抑える薬です。人によって、下痢とか吐き気を起こす場合がありますので、奥さんの様子を見てあげてください。異常がなければ、薬の量を順次増やしていきます」とも言われた。

丁重にお礼を言って、二人で診療所を出た。

「お父さん。ここの先生、優しくて感じが良かったわ。私、いろいろと聞かれたわ。答えられないところもあったけど……」
「それでいいんや。来週、宇治の病院に行って、今度は機械で健康診断をすることになったよ。この際、しっかり診てもらおうね」
「うん。どこも悪くないと思うけど、診てもらうわ。また、連れて行って」と不安そうな様子もなく応じてきた。

「健康診断に行く」という表現が行く気にさせたと思う。

*注 長谷川式認知症スケールテストとは、長谷川和夫氏(医学者、精神科医、認知症介護研究専門家)が考案した認知症検査法で10分~15分の検査。今日は何月何日ですか、ここはどこですか、年齢は、生まれたのはどこかなど10数問ある。

※本記事は、2020年8月刊行の書籍『認知症介護自宅ケア奮闘記 私の知恵と工夫』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。